天使は金の瞳で毒を盛る
我ながら歯切れが悪い。

「まあいい、どちらにしろ、もうすぐ三ヶ月だな。そろそろ答えを出すだろう、あいつも」

「…そういうものかしら?」

「なんだ、聞いてないのか」

なんのこと?

「彼にこの話を振った時に言ってあるんだ。三ヶ月ぐらい待つ、と。そろそろだろう?」

え?なに?聞いてない!タイムリミットがあるの?

「え、でも、なに?私は選べれないの?」

「もちろん一花が選べばいい。だが、期限内に望ましい答えに行き着く手腕は必要だからね」

私は取引材料か!

「まあ、そんな顔するな。最終判断は君が下せばいいだけのことだ」

絶対お父様、仕事とごっちゃになってる。恋の話なのよ!私にとっては!

お父様は笑うと、もうその話には触れなかった。

私はとにかく腹が立ったので、ワインをガブガブ飲んで気を晴らした。



「勅使川原さん、あなた今日結構ひどい顔してますよ?」

始業前、私は面白そうに自販機の前で声をかけてきた男を見上げた。

「すみません、大丈夫です、課長」

私はコーヒーのボタンを押しながら不機嫌に答える。ほんのちょっと頭いたくて重いだけです。ええ、大したことはないですとも。

「二日酔いになるほど、なんの話したんです?社長と」

榛瑠が私にこっそり囁く。

「…別に」

話にもならないような、話でしたわよ。

「そうですか。来月のパーティーの話聞きました?」

「あ、聞いた。行くの?」

「出ろと言われてますから」

あー、そうなんだあ。本当に榛瑠を連れてまわってるなあ。

「正直、面倒ですが仕方がありません」

「先輩達とは直接面識あるんだっけ?」

「あります。あんまり好かれてもいなさそうでしたけど」
< 105 / 180 >

この作品をシェア

pagetop