天使は金の瞳で毒を盛る
「鬼塚さんなんて、彼女作ろうと思えばすぐですよ。巨乳好きと、口が悪いのと、顔と態度が怖いのを直せばすぐです」

「うるさい。条件あげすぎだ、お前」

一花が朗らかに笑う。そのままこてっと、カウンターに突っ伏した。

まだ二杯めの途中なのに、思ったより弱い。

「一花、だいじょう…」

「うそですよ」

一花が頭をカウンターにのせたまま、鬼塚の方を見上げながら言った。

「え?」

「嘘です。鬼塚さん、怖くないですよ」

そう言って微笑むと、そのまま目をとじる。

鬼塚はその顔をじっと見た。そして視線をずらすと言った。

「じゃあさ、お前が俺とつきあうか?」

「鬼塚さん、手近すぎ〜」

そう言って一花は笑った。

まあ、そうなるよな、とは思う。一花を見ると、まだ目を閉じたままだ。

無防備だな、こいつ、とその顔を見て思う。このまま押せば落とせるならそうするところなんだがな…。

「一花、大丈夫か?」

「大丈夫ですよ〜。昨日もお父様とのんでえ」

父親を結構な呼び方をする。亭主関白とかか?

「眠いなら奥の部屋貸して貰えばいいぞ?義姉さんいるし。そうするか?」

「へいきですう」

一花がヘラっと笑った。鬼塚はその顔をみて軽くため息をついた。

参ったな、と思う。可愛さだけなら甥っ子といい勝負だ、俺としては、だが。

結局、すでに半分寝てしまっている一花の頭に手をやる。

さて、これを争って、勝負になるか?

その時、入り口の戸が開く音がして店の中が一瞬ざわっとした。

目を挙げると、金髪で長身で男から見てもイケメンの奴が、さも当たり前のような顔をして入ってくるところだった。
< 119 / 180 >

この作品をシェア

pagetop