天使は金の瞳で毒を盛る
榛瑠が電話をかけながらちらっと鬼塚さんを見る。

さっき内線を取った佐藤さんがとりあえず鬼塚さんに説明している。

「どういうことだよ、行方不明って。これ、納入日ギリだからって言っただろうが。確認してなかったんか?誰だオーダー担当したやつ!」

えっと、私は言い淀んだ。だって、この荷物って…

「あの、勅使川原さんです」

林さんのきれいな声がフロアを横切った。視線が私に集まる中、私は林さんを見た。

え、まってよ、確かに私がオーダーかけたけど、それは林さんが休んでた日に代理でやっただけで、そのあと、ちゃんと引き継いだはず…

だから、その後のことなんて全く知らなかった。

でも、それを口にはできなかった。言い訳にしか聞こえない。それに、誰のせいだろうが起こってしまったことは変わらないのだし。

「勅使川原一花!お前か!こんなとこまできてやらかしてくれるな」

鬼塚さんが言いながら近づいてくる。私は思わず体を引く。鬼塚さんは半年前まで、第二営業で営業補佐していた私の直の上司だった人だ。

約二年お世話になったけど、もう、散々怒られまくった。

「一花、お前わ〜」

鬼塚さんが腕を伸ばしてくる。私は反射的に目をつぶって手で頭をかばう。

「すいません、ごめんなさい!」

でも、降りてくるはずの手の感触がなくて、そっと目を開けた。

すぐそばに榛瑠が立っていて、鬼塚さんの腕を掴んでいた。
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