天使は金の瞳で毒を盛る
「いらっしゃい」

兄が声をかける。

「…どこのチャラいのが入ってきたかと思ったぞ」

「そういうこと言われるのは心外ですね」

鬼塚の言葉に四条榛瑠は言い返しながら、一花の頭に置かれた手を躊躇なくどかした。

「そんなにジャリジャリつけてよく言う。ちょっとびっくりしたわ」

鬼塚はとりあえず大人しく手を引っ込めながら言う。

「一度帰宅したので。普段仕様です」

四条は黒のパンツに黒いジャケットを着て、ピアスやらネックレスやら指輪までしていた。また似合うから、からかうのも難しい。

「何にします?」

一花の横に座ったソイツに店の主人である兄が聞く。

「日本酒詳しくないのでお任せします」

「辛口でいい?」

四条が頷く。鬼塚は自分の酒に口をつけながら聞いてみた。

「普段は何飲むんだ?」

「ワインかな。でも、必要がなければ飲みませんね。人と会った時くらいです」

「そうなのか?まあ、俺も普段はビールだけどよ。弱いわけじゃないんだろ?」

「弱くはないと思いますけどね。それでも、酒が入るといろいろ効率が落ちるので」

そう言いながらでてきた酒をふつうに飲んでいる。効率って、こいつ、いつも何やってんだか。

「ここ、よくわかったな」

「わかりますよ」

四条は簡潔に答えた。そうだろうな、と鬼塚も思う。

「…いい店ですね」

「どうも。昼間は酒屋なんだけどな。俺の実家。兄貴が継いでこのスペース作ってさ」
< 120 / 180 >

この作品をシェア

pagetop