天使は金の瞳で毒を盛る
「鬼塚さんは一人暮らしでしたか?」
「ああ、大学の時に家を出た。お前も一人暮らしだろ?確か、わりと会社の近くに住んでるって」
「よくご存知ですね」
知りたくなくとも、お前の噂はなにかと入ってくるんだよ、と鬼塚は思った。一人暮らし、ねえ。
あれは、船の行方不明事件の後だったか。残業でおそくなって一人で飯食って帰るとき、四条榛瑠の乗る車を偶然見かけた。
その助手席にいたのは、多分こいつだ。
鬼塚は隣で突っ伏している一花に目をやる。一体、どういう関係なんだか。イケメンで仕事のできるエリートと目立たない女子事務員、か。
「一応、二杯も飲ましてないんだぜ?思ったより弱いな、一花」
「いい加減、本人が自覚すればいいのにと思いますけどね」
よく知っているようなその口ぶりに鬼塚は少しイラっとする。だが顔には出さず静かに酒を傾ける。
隣も静かに飲んでいた。何を考えているかわからない、端正な横顔で。
それにしてもちょっと驚く。鬼塚は隣の男のいくつかついたピアスやらを見ながら思う。会社では隙のない淡々とした男がプライベートではこの格好か。
なんかありそうな奴とは思っていたけど、マジで得体が知れない。なんだかんだ言って興味深い男だ。
「これさ、つけすぎじゃないのか?」
鬼塚は男の左指についた指輪をさして言った。長くて綺麗な指に三つ、ゴツい指輪をしている。
「ああ。つけてると攻撃力あがるんですよね」
「え、マジか。指、痛くないのか」
「全然。いいですよ、これ」
「へえ、それならいいな」
その時、いきなり一花が起き上がった。
「ああ、大学の時に家を出た。お前も一人暮らしだろ?確か、わりと会社の近くに住んでるって」
「よくご存知ですね」
知りたくなくとも、お前の噂はなにかと入ってくるんだよ、と鬼塚は思った。一人暮らし、ねえ。
あれは、船の行方不明事件の後だったか。残業でおそくなって一人で飯食って帰るとき、四条榛瑠の乗る車を偶然見かけた。
その助手席にいたのは、多分こいつだ。
鬼塚は隣で突っ伏している一花に目をやる。一体、どういう関係なんだか。イケメンで仕事のできるエリートと目立たない女子事務員、か。
「一応、二杯も飲ましてないんだぜ?思ったより弱いな、一花」
「いい加減、本人が自覚すればいいのにと思いますけどね」
よく知っているようなその口ぶりに鬼塚は少しイラっとする。だが顔には出さず静かに酒を傾ける。
隣も静かに飲んでいた。何を考えているかわからない、端正な横顔で。
それにしてもちょっと驚く。鬼塚は隣の男のいくつかついたピアスやらを見ながら思う。会社では隙のない淡々とした男がプライベートではこの格好か。
なんかありそうな奴とは思っていたけど、マジで得体が知れない。なんだかんだ言って興味深い男だ。
「これさ、つけすぎじゃないのか?」
鬼塚は男の左指についた指輪をさして言った。長くて綺麗な指に三つ、ゴツい指輪をしている。
「ああ。つけてると攻撃力あがるんですよね」
「え、マジか。指、痛くないのか」
「全然。いいですよ、これ」
「へえ、それならいいな」
その時、いきなり一花が起き上がった。