天使は金の瞳で毒を盛る
「…私の方は、…お気づきでしょうけど、昔から知っているので」

四条が前を向いたまま言う。

「幼馴染って奴?」

「一般的な言い方ではそうですね」

答えを聞きながら曖昧だなと鬼塚は思う。

四条の出身高校は超名門校だから、一花と知り合うとしたら小学校か中学、もしくは近所ってことか?何にしろ知り合いというだけでは理由としては甘い。

言いたくない、というところだろうが、それならそれでいい。話を振っておいてなんだが、他人の恋情なんか聞いてもしょうがない。

知りたかったのは、何をどういう表情で話すかだ。

そこまで考えて、鬼塚は気づいた。どうやら俺は、一花のことは別にしてもこの男に興味があるらしい。

「ついでにさ、前から気になっていたこと聞いていいか?」

「何でしょう?」

「何でわざわざ日本に戻って来たんだ?」

「だから、元々、日本で育ってますから…」

「それは聞いた。でも、お前、その外見からしても、向こうの方がやりやすくないのか?」

「見た目はそうですけど、だからといってなにもかもいいわけでもないですよ」

それは、そうなんだが。

「そうなんだろうな、きっと。俺は日本の今の会社でしか働いたことないしわからんけど。ただ、なんつうか、極々たまにだけどつまらなそうな顔してるからさ」

「私がですか?」

「そう。それとも俺の気のせいか?」

きっと、違う。うちの会社はいい会社とは思うが、それでも合理的な人間には馴染まない部分はあるだろう。そう、日本に、というより、組織に、の方が正しいな。

「お前なら一人で仕事作り出して生きていけるだろうに、ってことだよ」
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