天使は金の瞳で毒を盛る
四条はすぐには答えなかった。ちょっと考え込み、それから言った。

「それはつまり、評価していただいてると解釈していいのですか」

「どうかな、俺のただの感想だ。でも、お前が来て仕事はすごくやりやすくなった。それは本当にありがたいと思ってる」

「そう言っていただけるのは嬉しいですね。つまらない顔は気をつけますよ、仕事には不満はないですし。ちょっと忙しいですけど」

「俺のつまらん勘ぐりだったな」

四条はふっと笑った。

「むしろ、勘がいいというべきかな。私、前いたところに会社持ってるんですよ、既に」

は?なんだそれ。

「もちろん任せて来てるので、私は名前だけに近いですけど、立ち上げは私なので」

「何の会社だ?」

「ITというか、プログラミングですね」

「それで夜遅くまで働いてる?」

「時差がありますからね」

「それ、採算取れてるのか?」

「私のメイン収入はそっちですよ」

って、会社勤めがついでか。うちの会社の給与べつに悪くないぞ⁈ 何だそりゃ、なにが人に任してるだよ。

驚いたが、けれど納得する。この男らしい。

「でも、それなら尚更なんで日本に…。あ、そうか、社長に呼ばれたのか?」

そういえば、四条って社長の縁戚だったと聞いた。それで?

「パソコンさえあればどこにいても仕事はできるんですよ。もともと天涯孤独みたいなもので他人の家で育ってますし、正直、何でもいいんです」

直接、鬼塚の質問には答えずそういうと、舐めるように酒を口にする。
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