天使は金の瞳で毒を盛る
「すいません、確認しきれなかったのは上司である私のミスです。申し訳ない」

榛瑠が落ち着いた声で言う。鬼塚さんは榛瑠の手を振り払うと、こちらも落ち着いた声で言った。

「何とかなりそうか?」

榛瑠が状況を説明する。まだ、船が見つからないらしい。

「だいたいなんだよ行方不明って。」

「先日、台風が発生したのでそれを避けてどこかの港に入ったんだと思います。いま、中国以南を中心に港をあったてますのでほどなく見つかるはずです」

「日本に入るのはいつ頃になりそうだ。」

「最速で3日後と言うところでしょうか」

「それじゃあ間に合わないな。3日後には荷を入れていたいんだ。初めての顧客だ、落としたくない。一日ズレただけで、損失が大きい。」

「…国内在庫は?」

「うちの会社では持っていない。他に持っているところがないか、第二営業総出であたっているが、何しろあるないかわからないのを探してるんだ。時間がかかる。今日日付が変わるまでやっても、それから発注して間に合うかどうか、ってところだ」

「どうやって探しているんですか?」

「心当たりがあるところは電話。あとはとりあえずネットでサーチかけてるけど時間ばかりかかってるよ」

榛瑠が考え込む顔をした。そして、おもむろに言った。

「勅使川原さん」

「はいっ」

私は急に名前を呼ばれてびっくりして背筋を伸ばす。

「資料室に内線かけてミソノさんを呼び出してください」

誰だろう、ミソノって。でも、とにかく急いで電話しなくちゃ。

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