天使は金の瞳で毒を盛る
結局、それしかないしな。

それにいくら格好悪かろうとも、そこが今の俺の主戦場だ。

冷たい夜の匂いがゆっくり酔いを覚ましてくれる。

アパートに帰って、風呂入ったらさっさと寝よう。朝、目覚めたら明日で、そしたら仕事だ。

夜空を見上げると細く三日月がかかっていた。綺麗だな、と思う。

…そうだな、それでももう少し想ってみようか。自分の手をすり抜けて行った幻の花みたいな女のことを。

ここから明日までの間ぐらいなら許されるだろう。

鬼塚はゆっくりと細い月を眺めながら歩いた。



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