天使は金の瞳で毒を盛る
榛瑠の時間
一花はゆっくり目を開けた。

部屋の窓から澄んだ朝の光がそそぎ込んでいた。ベットに座ったまま明るい青い空を見つめる。

昨夜感じた寂しさが体の奥に残っていた。

昨晩、榛瑠は車を自分のマンションまで寄ってもらって、先に帰って行った。

それは別に良かった。でも、彼が降りて一花が屋敷に帰るまでの間、それまで寄りかかって側にあった体がなくなったことが、心細くて、寒くて、たまらなかった。

酔っていたせいもあると思う。

でも、寂しいって身体中で思っていた。そして、それは久しぶりだった。久しぶりに感じた感覚。

良く知っている感覚だったのに、どうして忘れていたんだろうか。

理由は簡単だと思う。榛瑠がいたから。帰ってきたから。

だからちょっと忘れてた。だから突然思い出したように感じた時、たまらなく寂しかった。

好きなものっていくつかある。

朝の光、真っ白なシーツ、ちょっと冷たさのあるそよ風や、青い空。

ほんのり甘いかためのプリン、コーヒーの香り。

それがのっている白い皿とコーヒーカップ。

作ってくれる手。出してくれる笑顔。

榛瑠。


あなたに側にいてほしい。



あなたが好きなのが私でなくても。



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