天使は金の瞳で毒を盛る
滅多に関わりのない、こう言ってはなんだが日陰部署の資料室に電話をかけて、ミソノさんを呼び出してもらう。

なかなか出てくれない。

「船、見つかりました!上海です!」

受話器を抑えながら部署の先輩が大声で叫んだ。榛瑠がその人のところに行く。ちょうどその時私の電話にも人が出た。

「美園ですけど、なに?」

電話口から聞こえてきたのは不機嫌そうに喋る女性の声だった。

「あの、国際事業部ですけど、課長がお話があると…。ちょっと待ってくださいね」

私は電話口を抑えながら大きな声で言った。

「あの、ミソノさんでました」

こっちに回して、と、こちらに背を向けてパソコンを見ながら四条課長が言う。内線を回すと何か話してすぐに電話を切っていた。

「ミソノって誰だ?」

鬼塚さんが隣に立って言う。さあ、とわたしは答えた。

「どうでもいいけど、おまえさ、あんまりやらかすなよなあ」

鬼塚さんがわたしを見下ろしながら言った。

「本当にすみませんでした」

私は深々と頭を下げる。それ以外に謝り方がわからない。確かに、気をつけて追っていれば防げたかもしれないし、少なくとももっと早く対処できていたに違いなかった。

私のせいかな、って思うところもあるけど、私が気づける案件ではあったとおもう。

鬼塚さんが再び口を開きかけた時、明るい、甘ったるい声がした。

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