天使は金の瞳で毒を盛る
何を言っているのこの人?からかってるの?…人の一大決心をなんだと!

私が文句を言おうと口を開きかけた時、彼は私に近づいて腰に両腕を回して持ち上げた。

!?何!?

私は抱え上げられながら混乱して榛瑠の顔を見下ろす。

榛瑠は相変わらず美しく微笑んで言った。

「綺麗だけどね、お嬢様、愛の告白はもうちょっと可愛い方が私の好みだな」

「…告白なんてしてないもん」

「今の、プロポーズじゃないの?」

「そうだけど…」顔から火が出そう。「だって、お父様が三カ月っていうし、とりあえず…」

ああ、私のバカ!この後に及んで何を。榛瑠の肩に置いた手に思わず力が入る。

「ああ、あれ、嘘ですよ」

「?!うそ?」

「そう、彼が勝手に提案しただけ。その場で断ってある」

「じゃ、なんでわざわざ私に…」

私の耳に入れる必要が?

「あなたを少し行動させようとしたんでしょう。結構、短気な人だしね」

お父様のバカ!本気で焦ったのに!

「で、どうする?」

「何がっ」

つい、言葉が強くなる。

「さっきの一花の提案だよ。保留にするの?」

「え…」

私は榛瑠を見る。彼も私を見る。

私は榛瑠の首に両腕回して顔を埋めた。

「保留にしない」

声は小さかった。ちゃんと聞こえたかわからない。

榛瑠はぎゅっと私を抱きしめた。

「一花」

そう、甘い声で私の名をため息のように呼ぶと、私を下におろした。

恥ずかしくて顔をみられない。榛瑠はそんな私の顔を両手で包んで上を向かせる。

キスされる。優しくて、でも逃れられない。

「まって」私はなんとかキスの合間に言う。「まだ返事をもらってないわ」

「あなたの望むように、一花」

そう言ってまた抱きしめられてキスされる。
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