天使は金の瞳で毒を盛る
「あ、そういえば」

榛瑠が急に言って私を離した。

「私は好きだって言われてませんけど」

「はい?」

「言いましょうか?ね?」

そう言って私を見てにっこりする。

「言った……みたいなものじゃない!」

「みたい、じゃなくて」

改めて言われるとすっごく恥ずかしい。絶対、ただ単にからかってるでしょ!

「……いいの!知らない!」

「ずるいですね、お嬢様は」

顔から火が出る。榛瑠はすごく楽しそうだ。どっちがずるいのよ。

「だいたい、榛瑠がさっさと告白してくれれば私はこんなに悩まなかったのよ。会社のことだってスッキリするしいいことしかないのに。なんで?」

半ば八つ当たりだったけど、聞かずにはいられない。だってそうじゃない?

「だって、あなたに伝えたところでどうせ信じなかったでしょうし」

う……確かにそうかも、だけど。

「あとは、あなたの父親に文句言ってください」

「なんでお父様?」

「期日の話とはべつに条件があったんです。あなたを口説くなっていうね」

「……え?」

どういうこと?

「私みたいなのが口説いたら自分の純情な娘はすぐ騙されると考えたらしいです。口説かずに落とせって、バカバカしいですよ、実際。あなたが相手でなければ付き合いきれないところですが、まあ、仕方ないので」

「なにそれ……」

私ってばなんか……。え?あれ?口説かれてない?私は再会してからのあれこれを思い出す。

なに?あれもこれも、平常仕様なの?じゃあ、本気モードだったら……。

ああ、やだ、お父様は正しかったのかも。本気出されたら五分ともたない気がしてきた。

「それにしたってお父様口出しすぎ。なに考えてるのよ。ていうか、なんで榛瑠が条件のんじゃったのよ」
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