天使は金の瞳で毒を盛る
「無理するもん」

指輪だけじゃない。私は榛瑠にしがみついた。

「大好きよ」

「…うん」

榛瑠の声は優しい。大好き。大事にする。大事にさせて。何より、あなたをーー


榛瑠は私が泣き止むまでじっと抱きしめていてくれた。それから、私の頬にキスして呟いた。

「やっぱりなかなかうまくならないな」

「何が?」

私は鼻声で問う。

「ん?泣き止ます方法」

「え、なにそれ」

思わず笑ってしまう。彼はそんな私を見て微笑んでいる。

それからおもむろに横たわった。

「あー長かったー」

どういう意味なんだろう?よくわからないけど。

「榛瑠、背広汚れるよ」

「いいよ、別に」

眩しいのか腕で目元を隠しながら芝の上に仰向けに寝っ転がっている。

金色の髪が風でゆれる。私は寝転ぶ彼の横に座ってその揺れる前髪にそっとさわってみる。

庭は日が差して明るくて、でも風が強かった。榛瑠は目元を隠したまま動かない。

しばらくして声をかけた。

「榛瑠?寝ちゃった?」

「寝てないよ」

そう言って上体を起こした。髪に芝がついていた。私は取ろうと膝立ちになって手を伸ばす。

「ねえ、さっき言っていた長いってなにが?」

榛瑠が私を引き寄せて私に顔を埋めるように抱きしめた。わ、っちょっと、胸に頭あたってますけど!

「んーやっぱり長くないです。むしろ短い」

「はい?」

「今こうしているのが。三ヶ月ですからね。三ヶ月前は口を聞いてもらえないかもと思ってましたから」

そうなの?そう思いながら会いにきたの?

榛瑠が私を見上げる。
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