天使は金の瞳で毒を盛る
どう違うのかわからなかった。命令、なら彼はそばにいたのだろうか。

「そしたら行かなかった?」

「立場の自覚があるだけマシって話です」

面白くもなさそうに彼は答える。そう、榛瑠はたまにこんな風にひどく私に冷たくなる。

なんで?喉のあたりが詰まったように感じる。

「私、本当に指輪もらっていいの?返そうか?」

「返品不可」

榛瑠は冷たく言い切る。だったらもうちょっと優しくしてくれてもいいじゃない。

右手で指輪をさわる。涙がでそうだった。

「そんなんだから疑っちゃうんじゃない。本当は嫌われてるんじゃないかとか、ただお嬢様だから相手してくれてるとか、会社のためにもどってきたとか、思うんじゃない」

そうよ、「私のせいじゃない!榛瑠がいつだって悪いのよ!」

涙が滲んだ。いまさっき、最高に幸福だったのに。なんで?

榛瑠が私を抱き寄せた。広くて温かくていい匂いがする。

「あなたは私にとってはずっとお嬢様ですよ。ワガママで勝手で可愛い、ね。どこかの条件だけはいい男と適当に幸せになるはずの人だったのに、いつまでたってもフラフラしてるし。お陰でこんなことになる」

散々したお見合いの話?それとも破談になった婚約者の話?私は彼から体を離した。

「かわいそうに思ってもらわなくてもいいよ。そんなのなら要らない」

「かわいそう?あなたのどこが?むしろかわいそうなのは私ですよ」

「それこそどこが?いつだって俺様顔で好き勝手やってたくせに!」

そんなあなたをいつだって追いかけていた。そしていつだって届かなかった。
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