天使は金の瞳で毒を盛る
「お嬢様じゃなかったら相手にもしなかったんでしょうよ。いつだって上から目線で。大っ嫌い!」

次の瞬間、地面に押し倒されていた。両手が彼の両手で押さえ込まれていて全然動けない。

「いいかげんにしろ」

榛瑠の低いつぶやきが聞こえた。

榛瑠がワンピースの胸元の白いリボンを噛んで引っ張る。リボンがほどけて首回りのギャザーが緩む。

「ちょっ、ちょっと!」

私の慌てた声は全く無視される。彼と視線が合わない。というか、押さえ込まれていて目に入るのは青い空だけだ。

はだけたであろう胸元にひやっとしたものを感じた。舌の感触だった。

「ーー!」

思わず目をつぶった。逃れようと手首を動かそうとするが全く動かせない。

「やだっ」

自分の意思と反して息が荒くなる。榛瑠の舌が慌てることなくゆっくりと胸の下着の線に沿って肌をなぞっていく。

体がおかしくなる。声が漏れないように唇をかむ。そして代わりに涙がにじむ。

お願い、やめて。そんなふうに冷たく触らないで。

そう言う代わりに我慢できずに声が漏れたとき、ふっと、彼が頭をあげた。

ほっとした、と思ったら今度は首の横を舐められた。全身がぞくっとする。

「おねが…い…、どいて」

本気で泣きそうだった。

「で、そばに置いてどうするつもりだった?」

榛瑠が耳元で囁いた。冷静な声だった。

言ってる意味がすぐには理解できなかった。なんのこと?ドキドキし続けてる体を鎮めようとそっちに意識が向かう。

「引き止めてそばに置いて何をさせるつもりだったの?一花お嬢様」

声がわずかに嘲笑うような含みを帯びる。言っている意味がやっと理解できる。

「なにって…」

なにも。それまで通りにそばにいて欲しかっただけ。
< 152 / 180 >

この作品をシェア

pagetop