天使は金の瞳で毒を盛る
榛瑠は今にも笑い出しそうな顔をしている。死ぬほど悔しい。

「どうせ後からバカにしてたんでしょう」

「バカにはしてませんよ、全く。でも、あなた方が帰ったあと爆笑させていただきました」

「……!もういい!しらない!」

私が怒って立ち上がろうとするのを引き止めて榛瑠が後ろから抱き寄せる。

「ごめん、ごめん。だってあんまり可愛かったから」

そう楽しそうに笑いながら言う。

私は彼の膝の間に挟まれて、両腕で抱きしめられて後頭部にキスされる。

「…あなた、実はちょっと私のこと嫌いよね」

「ああ、まあ?何年も放っておけるぐらいには嫌いですよ?」

「……」

「でも、自分で築いたものを全部放り出せるくらいには好きですよ」

後ろからギュって抱きしめられる。私は拗ねてみせる。

榛瑠は矛盾に満ちている人だなって思う。矛盾して揺らいでいる。

ああもう。どうしよう。大好き。すごく好き。

だから、拗ねてしまうの。悔しくて。

「でも、捨てる以上は成果がないと意味がないからね。そのまま帰ってまたあなたの世話係に戻ってもしょうがないし。結局、あなた自身より父親を攻略するのが最終的には近道だと判断したのですが、その分時間がかかってしまった。」

「? どういう意味?」

「あなたと同じ立ち位置に立とうと思ったら、自分の付加価値を高めるしかないでしょう?むげに手放すのは惜しいと思わせるくらいにはね。そのための時間が必要だったという事です。ま、日本に呼ばれたあたりで第一関門はクリアかな」
< 156 / 180 >

この作品をシェア

pagetop