天使は金の瞳で毒を盛る
終章の補足
「ねえ、お父様には言うの?」

「報告するよ。そうじゃないとあなた、次の見合い相手が手配されるよ」

私はギョッとした。冗談じゃないわよ。

「そっか…。あ、イヤなんじゃないよ、ただ、もうちょっと働いていたかったかなあって思うだけ」

最近、やっと仕事が回るようになってきたかなって思うから。

でも、結婚した後も素性隠して仕事するのはやっぱり無理が出てくるだろうし。

「いいと思いますよ?というか、そうなりますよ。すぐに状況が変わることはないでしょうから。私としては残念ですが」

榛瑠の言葉にホッとする。ずっとこのままがいいわけではないので、一抹の不安はあるけど。

「当面は上司と部下での付き合いってところで収める事になるでしょうね。ま、それでも要らぬムシは排除できるかな」

そっか、そうなるよね。四条課長と私のお付き合い、か。

……ちょっと待て。ちょっとまってよ。やばくない、それ?何をどう間違って地味な一事務員の私と課長が?

ないでしょ、ないよ。というか、そんな事になったら女性方の視線怖くて違う意味で仕事続けられないよ!絶対!

「待って、ごめん。あの、会社では極秘でお願いします」

「…は?」

榛瑠が訝しげな顔をする。

「だって無理だよ!私と課長?ないよ絶対!」

「何を……」

「あなたは自分の人気をわかってないんだってば!」

「なに、バカバカしいことを言っているんですか」

榛瑠が呆れたような声で言う。でも、なんと言われても、無理なものはムリ!
< 159 / 180 >

この作品をシェア

pagetop