天使は金の瞳で毒を盛る
「ごめんなさい、でも、お願い」私は彼に向かって手を合わせてお願いする。「あ、でも、秘密でも入籍しなくても全然、変わらず大好きだから!そこは疑わないで!」

「……何を真顔でずるい事言ってるかな、あなたは」

私は顔を上げた。榛瑠がものすごく冷ややかな目つきで私を見ていた。

「ずるい?の?」

本当に好きな気持ちは揺るがないって自信通り越してもう、事実なんだけど。なんで?

見上げる私の頭に彼の手が伸びてぐっと力を入れられる。わ、痛い!じゃなくてイタ気持ち良い?

「俺の独占欲なめんな」

そう、低い声でいうと、榛瑠は立ち上がって歩き出した。

ええー⁈ 、怒った?だって、でも。

「ま、待って」

私は座り込んだまま声をかける。彼は振り返りもしない。

え、やだ。

「榛瑠ってば!」

「……おやつ、作って持ってきましたけど、あげるのやめます」

そう言ってドンドン行ってしまう。

なにそれ、ひどい。

でも、わかってるんだから。いつもより、少しゆっくり歩いてくれてるって。ちゃんと追いつけるようにしてくれてるって。

「 待ってってば!独占するの反対!」

私は立ち上がった。

傾きかけた日が庭を光らせていて、彼がその中を歩いていくのを追いかける。

僅かに振り返った榛瑠の口元が笑っているのが見えた。




ー 完 ー





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