天使は金の瞳で毒を盛る
お嬢様とうって変わって、榛瑠は文句なく人目をひく少年だった。

そんな彼がどんな学校生活を過ごしているか想像できなかったのだが、一端を垣間見る機会があった。

一度だけ彼の友人が四人、遊びに来たのだ。生徒会のメンバーということだった。

私は好奇心もあって集まっていた榛瑠の部屋に飲み物を差し入れた。

榛瑠は驚いた顔を一瞬して、それからいつもの柔和さでグラスを載せたお盆を戸口で受け取ると言った。

「ありがとうございます、いただきます。でも、気を使わなくて大丈夫だから」

悪いことをしたかな、こちらが逆に気を使わせたな、と思った時、部屋の中から声が聞こえた。

「げ、お前が遠慮してるなんてありか!?部屋も狭いしさあ、マジかよ」

彼の部屋は古くは客室として使っていたらしく、シャワー室もついた、私から見ると十分に広い部屋だったのだが、そうか、いま話している男の子はこれで狭いという生活をしているのだな、と感心してしまった。

榛瑠は振り返って手近にあった台にお盆を置きながら言った。

「だから居候の身だって言ってるでしょう?残念ながらお坊ちゃんの期待に沿う生活はしていないので。こんなところにいて頂くのも申し訳ないし、迎え呼びましょうか?大体、一言も招待してないのに、なんでゾロゾロ来てんだよ」

「あーあ、ほんとバカ」

背の高い綺麗な女の子がグラスを配りながら呟いた。

「いちいち地雷踏むなよ。いい加減、学習を学習しろ」

榛瑠ほどではないが十分にイケメンの、サラサラした黒髪の子が言う。

「とばっちりはイヤだな」

もうひとりの、やたらと体の大きな男の子がグラスを受け取りながら低い声で言った。
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