天使は金の瞳で毒を盛る
「ここ、式はあってるけど計算が違う」

「え、うそ。……あ、ほんとだ」

一花は消して書き直しながら榛瑠に言った。

「ねえ、どうしてそんなにすぐわかるの?」

「見れば分かりますよ」

「だからなんで?わかんない。もっと難しい問題でもすぐわかるよね?」

「式のバランス悪いでしょう、綺麗じゃない」

ますますわかんないよ、と一花がつぶやく。

「出来た!これでいい?」

「……うん、合ってます」

「ああ、よかった」そう言って一花は時計に目をやった。

「……残りは夜やるしかないなあ。もう時間ないし」

「何をそんなに慌ててるんです?」

「え、だって……。貴宏さん久しぶりにいらっしゃるし、お父様も同席されるから遅れたら嫌だし、その……」

「ふーん?」

榛瑠は興味なさそうな返事をして自分の席に戻る。

「じゃあ、残りの問題のヒント書いておきます。問題貸して。あと、何かメモありますか?」

ありがとう、と言いながら一花は大きい付箋とともに差し出した。

「なるべく細かくね。わかるようにね!」

榛瑠はその言葉に返事をせず書き始める。ペンを走らせながら、ふと、視線を感じて目を上げた。

「なに?」

「ううん」

一花は慌てて視線を外すと、机の上の物を片付け出した。

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