天使は金の瞳で毒を盛る
ああ、だめだ、こんなこと考えてる場合じゃない。私も出来ることしなくちゃ。

とは言っても、何ができるか思いつかない。正直、お呼びじゃないよね。そもそも、英語も大して喋れないから、国際電話もできないし…

四条課長はさっきから国際電話で話している。長引いているところを見ると、話がうまく進展していないのかもしれない。

あ、そうだ、もしかしたら。

私は自分のデスクのパソコンに向かった。

そうこうしているうちに課長が電話を切って話している声が聞こえた。

「ダメだな、ラチがあかない。」

「こちらもです。担当者がいないの一点張りで」

他の男性社員が答えている。

「ここで話していてもしょうがないな、すまないけど、そこの、林さん?フライトのチケットを…」

課長がこちらの席を見て言いかけた。

あ、やっぱり。私は林さんが答える前に言った。

「あの、次の上海行きなら、ビジネスなら取れるの確認しましたけど…」

「…それ、取って」

榛瑠の言葉に返事をしてチケットの手配をする。本当に本当にちょびっとだけどやれることがあって良かった。

なんか隣の席の林さんの視線が痛い気もするけど、まあ、いいや。

結局、四条課長はスーツケースを解くことなくそのまま持って機上の人となった。
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