天使は金の瞳で毒を盛る
そもそもこの悪夢は、昨日の私の誕生日から始まったのだ。

「美味しかったわ、お父様。」

私は美しいテーブルクロスがはられたテーブルの向かいに座っている父に言った。

父はうれしそうに、そうか、と言う。

その間に次の料理が運ばれてくる。最後のデザートとコーヒー。

美しく盛られたケーキ達に私は思わず、わあ、と言う。

ここまでのコースも最高だった。さすがお父様。こんなデート誰にも用意できないわ。
だいたい、この店予約取れないもの。でも、私は入れてしまう。

それもこの際奥のVIPルームに。ま、もちろんお父様のお力なのだけれど。

こういう時だけは舘野内家のお嬢様も悪くないと思ってしまう。

仕事が忙しくてほとんど家にも帰ってこない父だけど、いつも誕生日だけはこうやって祝ってくれる。お父様と私の大事な習慣だ。

「仕事はどうだい、一花」

「うん、頑張ってるよ」

といっても失敗ばかりなんだけど。

父は知ってか知らずか、そうか、と嬉しそうに言う。

私は大学卒業後、父の経営する会社に入った。本当は関係のない会社に入りたかったのだけれど、許してもらえなかったのだ。

そのかわり、社長令嬢というのは隠して仕事をすることは許してもらった。

だから会社では母の姓である勅使川原を名乗っている。

「ところで、一花は今お付き合いしている人はいるのかね?」

「いないわ」

と答えながらちょっと重い気分になる。もしかしてまた‥

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