天使は金の瞳で毒を盛る

ソファに座る私の前に、ガラスの器に盛られたピンク色のアイスクリームと珈琲が置かれている。

斜め向かいのソファには榛瑠が上着とネクタイを取った姿で座ってこっちを見ていた。

マンションについた後、食事は済ませてあることを言うと、ではこれを、と出してくれたのだ。

それは嬉しいのだけど、見られてると落ち着かないんだけど。

いくつかボタンが外されたワイシャツの下から、白い首筋と鎖骨が見える。ううっ、無駄に色気があるし。

それでもアイスは美味しそうでひとさじすくって口に入れた。

「あ、おいしい」

濃厚なクリームの中から甘酸っぱいフレッシュさの残るイチゴが出て来る。私の好きな味だ。

入れたての温かいコーヒーが口の中の甘さを消してくれて、でもイヤな苦味が残らない絶妙な感じ。

甘いのと酸っぱいのと苦いのと冷たいのと温かいの。無限にループで食べられそう。

「おいしいですか?」

「うん、おいしい。このアイスどこの?すごく好きかも」

「私が作りました。気にいったのなら良かったです。」

げっ、手作りでしたか。…それは私好みにおいしいはずだわ。

榛瑠は昔からよく私におやつを作ってくれていた。作るうちにどんどん上手になっていって。

榛瑠が作るおやつが私は大好きだった。…機嫌よく食べる私を見ている彼の顔を見るのが、すきだった。

まだ、お菓子作りしてたんだ。

食べ続ける私を見ながら榛瑠が言った。

「…今でも一番好きなのは変わりませんか?」

心臓がはねた。えっ、なに、好き?え、ええ?

「変わらずプリンですか?」

え、あ、おやつの話か。あれ、私、今、なんだと思ったのかな、…気のせいだ、うん。

「うん、焼きプリンが一番好き…」
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