天使は金の瞳で毒を盛る
「髪の毛乱れていますよ。直しますからじっとして。」

「え、いいよ、ちょっと」

「いいから」

よくないよ!誰かに見られたらどうするの!

でも、なんだか有無を言わせない感じでそこから動けない。この時間、まだ誰も来ないとは思うけど…。

そうこうしているうちに榛瑠が一つに束ねていたヘアゴムをる。

彼が手櫛で髪を整える。指が頭と髪に触れる。息を一瞬止めてしまう。

「確かに元気がないですね。どうしました?」

榛瑠が聞いてくる。あなたのせいよ、と、言いたい。けど、やめとこう。

「月曜日だからだよ。ちゃんと仕事はしますから」

「そうですか。はい、できました」

榛瑠が手を離した。ありがとう、と口の中でもごもごお礼を言う。

彼はそのまま涼しい顔で海外事業部のある部屋に入って行った。

なんだか余計滅入りそう。そう思いながら、女子更衣室に行き、そこにいた人たちと挨拶をしつつ、事務服に着替える。

朝からみんな愚痴ったり、結構賑やかだ。

その声をぼんやり聞きながら下着姿になった時、思い出したくないことが鮮明に蘇って、顔がほてってしまった。

一昨日の朝、目がさめると自分がどこにいるのかすぐには分からなかった。ベットでは寝ている。でも、これ、誰の?どこ?

そしてわかった時、叫びそうになってしまった。榛瑠のベットだ。いつの間に…、って、私って夕べ…

そうだ、ソファで眠ってしまったんだ。で、たぶん、運んでくれたんだ。

全く起きなかった自分を責めつつ、動揺しながらも畳んで置いてあった服を着る。

大丈夫、榛瑠が眠ったあとはないし。

でもそこで、本当に小さく叫んでしまった。

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