天使は金の瞳で毒を盛る
って、着替えてる!なんで私、下着姿なの?

しばらくそのままベットに倒れこんでしまったが、頑張って起きるとそっとリビングをのぞいた。

榛瑠は座って新聞を読んでいた。いつもと特に変わりはない。

そして、覗いている私を見つけると言った。

「おはようございます。どうしたんですかそんなところで。珍しく早起きですね。朝食、食べるでしょう?用意しますね」

そう言って立ち上がる。

「あ、あの、私、夕べどうしたんでしょう。」

声が震えてしまう。

「ソファで眠りこけていたので、寝室まで運んで寝かせました。」

「あの、で、どうして、その、服は」

「ああ、シワになるといけないので脱がせたんです。ところで、飲み物はコーヒーにしますか?紅茶にしますか?」

「紅茶で…」

榛瑠はそのままキッチンに行ってしまった。

私は回らない頭で、テーブルに座った。えーと、えーと。脱がしたってことは脱がされたってことは、見られているよね?

たいして待たないうちに目の前に朝食が並べられた。できたてのクロックムッシュと、サラダ、紅茶、フレッシュなフルーツ。

それから私の好きな素朴な味の焼きプリンも。昔よく作ってくれたのとおんなじ味。

そのどれもが美味しくて、食べ終わる頃にはつい、笑顔になっていて、自己嫌悪に陥る。

私が食べ終わると、榛瑠は送って行きますと、立ち上がった。

え?と思ったが断る理由もない。そのまま会話も無く車は私の家まで直行した。

家の車寄せまで来ると、彼はシートベルトを外して助手席の私の方に手を伸ばした。

ドキッとして、思わず目を閉じて身を硬くする。
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