天使は金の瞳で毒を盛る
「実はお前に紹介したい男がいてね」

ああ、やっぱり…。
父は大学卒業する頃から私にさりげなく、時には明確に男性を紹介してくれた。

別にそれが嫌だったわけではないの。小さい時からお父様の選んだ人と結婚するんだと思っていたし、実際、破談になったけど婚約者いたこともあったし。

私の結婚相手は舘野内の家を継ぐコトになるのだから、お父様が選ぶのも当然だし。

でも、愛娘に決して強要はしないでいてくれて、おかげで今だに婚約どころか恋人もいない。

それはいいとして、ただちょっと困るのは…

「彼は一花も気にいると思うぞ。私もいろいろ迷ったが、やはり一番いいと思ってな。将来性も申し分ない」

そうなの、決まらないのは私が選り好みしていると思っているの!

でも、ごめんなさいお父様、違うのよ〜 あなたの娘はふられちゃうのよ!

お父様が紹介してくださるハイスペックな男たちってそれに見合う女を求めるし、そういった女性も現実にいる。

美人で頭良くて華やかで、とか、一見地味でも実は良家の子女で品のある賢女とか。いるの!

そんな中、会社で何一つ猫被らなくても、地味で冴えないOLと認知されている私なんて、全然お呼びじゃないのよ!

お父様が気に入った男性ほど、こちらとしてはむしろ申し訳ないくらいで。ああ、もうほんと、いろいろつらい…

「それで今日呼んでいるんだ」

その言葉に、私は思わず手にしていたコーヒーのカップを音を立てて置いてしまった。

今日?だって今日は誕生日よ?私とお父様の大事なイベントなのに。

よっぽど気に入っているってこと?

でも、すごく嫌な気分。だれよ、いったい。

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