天使は金の瞳で毒を盛る
そんなわけで、どんなわけだか、金曜日の夜、私は焼肉をひっくり返している。

篠山さんが頑張ったせいか、榛瑠が参加したせいか、急な割には結構人が集まった。

国際事業部の人だけでなく、営業も参加している。組んで仕事をすることが多いので、ということになってはいるが、四条課長目当ての女子たちと一緒に、ついでに男性もということらしい。

あ、あと、意外に人気のこの人も参加者増に貢献しているらしいのだけど。

私は横にいるその人を見上げた。背広の上着を脱いで、腕をまくって楽しそうにビールを飲んでいる。

「鬼塚さん、焼けましたけど」

「お、食う食う」

私は鬼塚さんのお皿にお肉を置いた。まったく、なんで営業の係長の横にいなきゃならないのよ、と思ったが、口に出す前に営業のほうの幹事の男性社員が黙って顔の前に手を立てて謝ってきた。

つまるところ、押し付けられたわけで。

鬼塚さんへの女子評価は、近づかなければ目の保養、だもんなあ。きっと、誰もいなかったんだ…。

肝心の榛瑠はというと違うテーブルで女子社員に囲まれてお酌されていた。さっきからひっきりなしだ。そのすぐ近くに美園さんが陣取っている。

「何見てるんだ?」

鬼塚さんが聞いて来た。

「いや、なんで、美園さん…」

「ああ、俺が誘った。この前の時頑張ってくれたし。資料室二人だから飲み会もないだろうしさ」

こういうところ、この人のいいところではあるんだけど、今回は正直、余計なことして、と思う。

榛瑠は例の件、聞かれたらなんて答えるつもりなんだろう。バレるようなことは言わないと思うけど…。

その時、わっと女子の弾んだ声がした。私はビクッとする。
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