天使は金の瞳で毒を盛る
「えーそうなんだ、まさかあ。ほんとうです?」

女の子の声に周りの人も反応する。

「どうしたんだよ」

「四条課長、お嬢様に振られたらしいよ」

「え、まさかあ。本当ですか?」

「本当ですよ。」

榛瑠が 平然と答えている。

「え、じゃあ、今、彼女とかは?」

「いません」

近くに座っていた営業補佐の女の子たちの言葉が耳に入る。

「やった、課長フリーなんだ」

「でもさあ、そのお嬢様って何様?四条さんフルなんてありえないし」

…何様と言われれば、お嬢様なんです。心の中で私はつぶやいた。

「すごいブスとか。」

…反論はあえていたしません。

「四条すごい人気だな、相変わらず」頭の上から野太い声がした。「女にこまらなそうだよな」

「鬼塚さんだって、そうですよ」

「困ってる、困ってる。」

そう、全然困ってない顔をして言うと、また私の頭をクシャっと撫でた。

「そのクセと、選り好みやめればすぐですよ」

私は手を払いのけて言った。

「選り好みしたかあ?」

結構してます、そして付き合っても続きませんね、と思ったが黙った。そう、例えばこの中だと誰だろう。鬼塚係長の好きそうなタイプ…ってやっぱり…

「よっぽど気になるのな、それともなんかあるのか?」

私の視線の先には美園さんがいた。

「いやあ、鬼塚さんのタイプかなあって」

「よくわかるな」

わかります。わかりやすいですから。

「いや、でも、あの子得体しれないところあるからなあ。四条の女なのかって気もするし。あいつが日本に連れて来たんだろう?」
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