天使は金の瞳で毒を盛る
「らしいですけど…」

なんだか胸がギュッとした。その辺りの経緯を私はまったく知らない。

「それになあ、あの髪の色はなあ…。まだ、一花の方が好感持てるぞ」

私は好意的な言葉にびっくりしてあたふたしてしまった。

「ま、お前のいいところを大事にしてだな」

ん?

「強く生きろ、力にはなれんが」

なんか、もしかして、褒められて…ない?

「あの、鬼塚さん…」

「悪いな、俺、自分の理想捨てられないんだよな」

これってこれって、暗に言ってますよね!?

「どうせ私は貧乳ですよ!ほっといてください!」

この、巨乳好き!

その時、喉の奥で止めるような、クッという笑い声が聞こえた。見上げると、榛瑠がグラスを持って立っていた。

「お、すごいぞ一花。お前のネタが笑わないという四条課長を笑わせたぞ。よかったな」

「…いっぺん死にましょうか、鬼塚係長」

鬼塚さんが声を出して笑った。ほんっとに失礼!榛瑠も笑うんじゃないわよ!あなたが笑うと…笑えないのよ!

私の脳裏にあの朝の自分の姿が蘇る。うわぁってさけびたい。

「隣いいですか」榛瑠が言って、スペースのあった私の隣に座る。え、なんで、なんで?

動揺する私を横切って、榛瑠がビールの瓶を鬼塚さんに差し出した。

「お、悪いな」そう言って受け取ると、鬼塚さんも返している。

「ちょっと、びっくりだな。こういうことしないかと思ってたわ」
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