天使は金の瞳で毒を盛る
「なんでですか?鬼塚さん先輩なんですから、来ますよ」

「いや、でもさ、アメリカいたやつなんてしなさそうじゃないか?」

うん、わかる。ていうか、榛瑠が人にお酌するなんて。…私にはするけど。

私は二人の間に挟まれて小さくなりながら聞いていた。

「アメリカって言っても高校卒業後渡米したので、それまでは普通に日本の学校出てますし」

「お、そうなのか?へえ、高校どこだよ」

榛瑠が出身高校名を口にした。

「え、すごいな、あすこかよ。初めて会ったわ、出身のやつ」

榛瑠が卒業した高校は、入る試験のための選抜があると噂されているらしい私立で、良家の子ばかりが集まっている、鉄壁のセキュリティを誇るところだった。ちなみに私は小等部から入ったが、榛瑠は高等部からの編入生だった。

「俺、剣道の大会で試合したことあったけどな。あそこの生徒会ってすごいんだろう?将来の内閣のテスト版だとかって」

そんなことないですよ、と榛瑠が返している。今話している人は、会長やっていましたよお。

「剣道やってたんですね」

「まあな」

二人の話を聞きながらまだ余っていたお肉を焼く。自分で焼いたの初めてだけど、すごく楽しい。

でも、二人とも大きいから狭いんだけどっ。あと、なんとなく女性たちからの視線が痛いんだけど。

お肉が焼けたので取ろうとしたが、二人に挟まれてうまくとれない。仕方なく膝立ちになって腕を伸ばした。

ガチャッ

何かの食器が袖に引っかかった。

しまった、こぼした。
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