天使は金の瞳で毒を盛る
動揺と、いくつかの突き刺さるような視線を感じながらフラフラと店を出る。

「羨ましいな、先輩ってば。あー悔しい」

篠山さんが明るい調子で、こそっと私に言う。

「お願い、やめて…」

彼女は楽しそうに笑う。みんながこんなふうだと助かるんだけど、そういうわけにはいかないよね…。

気づくと、美園さんが榛瑠の横にひっついている。私を見た。視線が怖い。

この人、やっぱり何か感づいているのかもしれない。

何人かは二次会に流れ、残りはそれぞれ帰途についた。私は榛瑠や、美園さん、鬼塚係長とかその他何人かの人と駅へ向かって歩いた。

榛瑠は美園さんにべったりくっつかれていて、鬼塚さんは営業の部下と話しながら歩いている。

私は一人歩きながら、空を見上げる。

雲が速い速度で動いて、月を覆っていく。明日は天気が崩れるのかもしれない。

と、後ろの方で揉める声がした。振り返ってみると、女子社員が何人か、酔っていそうな柄の悪い若者たちに絡まれている。

近くの男性社員が止めに入ったが、どうも火に油といった感じのようだ。

「係長、止めてください」

私は近くにいた鬼塚さんに言った。

「うーん、あー大丈夫じゃね?」

みると、榛瑠が止めに入っていた。と思ったら、いきなり殴りかかられているし!余裕でかわしてるけど。

榛瑠が結構強いのは知ってるけど、多勢に無勢だし、こちらは手を出せない分、分が悪いんじゃあないの?

「加勢しないんですか?!鬼塚さん、強いんでしょう?」
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