天使は金の瞳で毒を盛る
「俺、段持ちよ?下手に手を出すと、逮捕ものよ?」

「え、そうなんですか?」

「でも、あれだな、ちょっと面白そうだな」

そう楽しそうに言って、指をボキボキ鳴らすと歩いていく。

私、もしかして、頼む人を間違えた?

止める間もなく鬼塚さんは拳を握ると勢いよく叩きつけた。…榛瑠に向かって。榛瑠が、右腕をあげて、ガードする。

「ちょっ、鬼塚さん何やってるんですかっ」

私は裏返った声で叫んでしまった。他からも女の子の悲鳴が漏れた。

「ちょっとふざけた。」

鬼塚さんは相変わらず楽しそうに言った。榛瑠は何事もなかったように乱れた背広を直している。でも、さっき二人の視線が交差した時、なにか冷たいものがそこにありませんでしたか?

その合間に絡んできてた人達は逃げ去っていた。そりゃあ、こんな二人と争いたくないよね。

まあ、とにかく大ごとにならなくてよかったね、とみんなで言っていたら、後ろから大きなダミ声が聞こえた。

「ちょっと、何広がってるのよ。邪魔よ!どいて」

あ、すいません、と私たちは道をあけた。声の主は、美園さんといい勝負のボディをした、…女性?

「なんだ、男かよ」

美園さんが何ら遠慮のないことを遠慮のない声で言った。ヒヤッとする。その人が思いっきり睨んでくる。

でも、何も言わず通り過ぎようとしてくれている。よかった〜。
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