天使は金の瞳で毒を盛る
惑溺の低気圧
時折吹く強風が窓ガラスに雨を打ち付けていた。

朝方から降り出した雨はだんだんと激しくなり、午後に入る頃には嵐のようになっていた。

「はあ」

私は自室のベットの上で寝転びながら窓の外を見た。なんでこんな天気の日に、わざわざ榛瑠はうちに来ているのだろう。

本人に聞けばいいことだが、まだ顔を合わせていない。

昨晩のことが色々気になって、逆に顔を合わせられなかった。

昨晩は結局、榛瑠はサトさんと、どこかへ飲みに行ってしまったのだ。ついていくと言う美園さんを穏やかに有無を言わせず拒否して。

残されたメンバーは何となくみんなキョトンとしていた。今頃いろんなところにいろんな情報が飛び交っていて、月曜日までには何らかのストーリーが出来上がっているにちがいない。

榛瑠にしては珍しく失態に思える。それとも、それさえ気にならないのかな。

なんだかすごく楽しそうだったし。日本に戻ってきてからあんな表情の彼を見たのは初めてだった。

ゴロゴロしていると部屋がノックされた。

「お嬢様、三時のお茶ですがこちらへお持ちしますか?」

いつもおやつの準備をしてくれている女性だ。

「そうね、ううん、やっぱりいつもの部屋でお願いします」

女性が出て行ってから一呼吸置いて自室を出る。

ダイニングとは違う、軽食をとったりするこじんまりとした部屋へ向かう。

扉を開ける前に軽く深呼吸をした。多分、ここにヤツはいる。

開けると案の定、榛瑠がいてノートパソコンにむかっていた。

すでにお茶一式が用意されている。丸テーブルの彼の横の席に。…いつもなら問題ないんだけどね。
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