天使は金の瞳で毒を盛る
「邪魔ならどきますが」

榛瑠はちらっとこちらを向いて言った。

「大丈夫だよ」

そう言って私も座る。なーんかね、気まずいんだよね。

でも極力、素知らぬふりをしてお茶をいただく。

榛瑠は右肘をついて顎を支えながら左手でスクロールしている。なんだかいつもより機嫌悪い気が…
二日酔い?まさかね。

窓に何かがあたる音がして、見ると、風に飛ばされた葉があたったようだった。

おやつはマカロンだった。私の好きなお店のものだ。うれしい。思わず顔がほころんじゃう。

その可愛らしいお菓子を口にしながら、そういえば、最初にこのお菓子を食べたのは榛瑠が作ったものだったな、と思い出す。

あ、やだ、変なことに気づいちゃった。

私、もしかしてこの先もおかしを食べるたびに似たようなことを思うんじゃあ…

どこかで恋人らしき人とお茶をしている妄想が頭に浮かぶ。で、デザートに出てくるお菓子を見て…

私は、軽く頭をふった。やめよう、冗談にならない。

榛瑠は話しかけてこない。私は沈黙に耐えかねて言ってみた。

「昨日は遅かったの?」

「そんなことはありません、雨が降り出す前には帰りました」

彼はパソコンを見たまま言う。って、ほとんど夜明けじゃない!もう、何やってたんだか…。…カンケイナイケド。

「お嬢様こそ無事帰られましたか?」

榛瑠が私をみながら言った。

「うん、帰ったよ。鬼塚さんが途中まで送ってくれたし。って、昨日の夜にも説明したよ?」
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