天使は金の瞳で毒を盛る

「なんなんだアレ」
「面白いですね」
「上司に意見したままずらかりやがったけど」
「悪気はないんですよ」
「男が体の欲求に耳を傾けるって、どういう意味になるかわかってないよな」
「…純粋培養ですから」
「え?なんだって?」
「いえ、別に。ところで私に何か用でしたか、鬼塚係長」
「お、そうだった。この前の、ミャンマーの工場の件なんだが…」


なんて会話が繰り広げられたことなど、その時の私はもちろん知らないまま、自分のデスクに戻る。

榛瑠はともかく鬼塚さんには流石にまずかったかしら。でも、あの人の下について見てた時もひどかったんだもの。

「どうしたんですか、一花さん」

憮然とした顔をしてたからか、篠山さんが声をかけてきた。

「うん、ちょっと、落ち込むというか、あって、でも、大丈夫」

「なら、あれですよ、やっぱりお肉です!」

はい?

「今日、ランチでトンカツどうですか?行きましょう!」

「いいけど」

「やった!実はデザートサービス券が今日までだったんですけど、トンカツ付き合ってくれる子なかなかいなくて、でも、美味しいですから。大丈夫です!美味しいお肉は無敵です」

この前の焼肉といい、お肉好きなんだなあ。

「うん、お昼楽しみにしてるね。…あの、林さんは?」

私は隣の林さんに声をかけた。船の行方不明の一件から私はなんとなく気まずいままなんだけど、林さんはこれといって気にしてるそぶりはない。

「私はお弁当持ってきているから」

「すごくヘルシーで綺麗なお弁当なんですよ。自分で手作りですよ!」

篠山さんが言う。

「すごいんだあ」

確かに綺麗なお弁当をいつも持ってきているの知ってる。でも、今日はお肉派の気分です!


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