天使は金の瞳で毒を盛る
それはそうだ、と佐藤さんが明るい声で笑った。

佐藤さんは国際事業部の中で特に目立つ方ではなかったが、丁寧な仕事ぶりとやわらかな明るさを持った人で、多分、この人を悪く言う人はいないのではと思わせる人だ。

となりに座ってる尾崎さんって人は、カッコいいと言ってもいい容姿だと思うし、落ち着いていてなんだろ、自信みたいのが透けて見える。多分、このひと、営業成績いいのではないだろうか。

後からきた二人が食べ終わる頃、私と篠山さんはゆっくりデザートを味わっていた。

手作りわらび餅。わらび粉で作ったわけではなさそうだが、でも、冷たくて、きな粉がほんのり甘くて、ぷるんとしてて、自然に口が微笑んでしまう。

榛瑠の作る和菓子もそういえば結構おいしいんだよね、今度わらび餅作ってもらおうかなあ…
って、ちがうでしょ、一花。

「ああ、やっぱり、デザート券無駄にしなくてよかったあ」

篠山さんが食べながら言う。

「本当だね、ありがとうね、誘ってくれて」

「いえ、いえ、一花さんとご飯するの嬉しいです。また一緒してくださいね」

篠山さんがそう言ってくれて、なんだか嬉しい気持ちになる。

「あれだね、勅使川原さんってすごく綺麗に食べるね」

尾崎さんが唐突に言った。え、たしかに残さず食べるけど…⁈食べすぎかな。なんか、ちょっと恥ずかしい。

「そうなんですよ、一花さん、食べる所作がすごい綺麗なの!」

篠山さんが言う。あ、そっち。でも、そうかなあ。

「そうかな、特に気にしてないんだけど」

「一花さん、仕事中なんかも姿勢いいよね。見てて気持ちがいいくらい」

今度は佐藤さんだ。

「ありがとうございます。そんなに言っても、何にも出ませんからね」

嬉しいんだけど、なんか恥ずかしいな。

「もう、一花先輩、自己評価低すぎなんだからあ」

「そんなことないと思うんだけどなあ」

「二人ともうちの部の人気ものだよ」

「でしょ、佐藤先輩、わかってるな!」

篠山さんの言葉にみんなで笑う。
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