天使は金の瞳で毒を盛る
四人揃って店をでて、話しながら会社まで歩いた。天気がよくって暖かい。

美味しいもの食べたし、また午後から頑張らなくっちゃ。

「あれ、課長じゃない?」

篠山さんがいきなり立ち止まって言った。視線の先、車道を超えた向こうの歩道を四条課長が歩いていた。

「一緒にいるのって早川女史?」

四条課長は女性と一緒にいた。うちの会社の秘書課でチーフをしている早川さんだった。

早川さんは、いい女ってこう言う人なのだろうと思わせる人だった。

ハイヒールの似合う細い足首、すらっと長い足、形のいいヒップとくびれた腰、整った胸と小さい頭と、そして整いすぎて美しさを忘れそうな顔立ち。豊かな髪をストイックに結んで、さっそうと歩く。

当然仕事もできて、欠点が見当たらない。お父様も実は彼女をかっているのを知っている。本当にこんな人も世の中にはいるのよねえ。

我が社の男性社員だけでなく、外部でもファンは多い。

「相変わらず綺麗だな、女史」

尾崎さんが言った。

「でもさ、課長さすがよね、あの早川さんと歩いても負けてないっていうか、むしろ引き立て役にしちゃってない?」

引き立て役はいいすぎでも、たしかに二人並ぶとお似合いだった。というか、すれ違う人、みんな見てってるよ、恥ずかしいなあ。

「俺はあんな人横にいたら落ち着かないだろうなあ」

再び歩き出しながら佐藤さんが笑いながら言う。なんかいい人。
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