天使は金の瞳で毒を盛る
「頼まれついでに冴えないお嬢様ももらってやろうとでも?」

私の言葉に彼は少し黙ってそれから言った。

「もともといつかは戻るだろうとは思っていました。あなたのお話をいただいたのはこちらに来てからです。」

いつかはって、9年よ!それまで音信不通よ?まあ、父には連絡取っていたみたいだけど。

ていうか、私も連絡しなかったけど!…だって、無理じゃない?あんな別れ方して…

いろいろ言いたいことはあったけど、言葉を飲み込んだ。

もう、過去のことだ。この人は、今の私には必要のない、関係のない人、だ。

「とにかく昨日の話は忘れて。ありえないから。お父様がどう言おうと。」

「そうですね、社長からもしばらくは様子を見るのもいいだろうと言われましたしね。」

って、ちょっと、私の話聞いてる?ほんっとにこの人はこうなんだから!嫌になる程変わってない。

私は思わず、つい、横にいる榛瑠を見上げてしまった。

ずっと背も高くなっている。出て行った時はまだ少年のおもかげが残っていたが、今はもうない。

すっかり大人の男になっている。なんだろう、何だか悔しい。

その時、あることに思い当たった。

「ねえ、まさかとは思うけど」

「何ですか?」

「あなた、ここに住むとか、そんなことは無いわよね」

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