天使は金の瞳で毒を盛る
また、会話が途切れてしまった。参ったなあ、どうしよう。

「…明日さ、一緒にお昼どうかな?」

唐突に尾崎さんが言った。え?なに?いいけどなんなの?

「佐藤や篠山さんだっけ、彼女とかも声かけてさ。明日の昼珍しく会社にいる予定なんだけど、ほら、そういう時俺、ぼっちだし?」

私は声を出して笑ってしまった。尾崎さんって一見、硬派っぽいっていうか、真面目そうなイケメンなのに、ぼっちって可愛い。

「いいですよ、私でよければ。」

尾崎さんがありがとう、と微笑む。落ち着いた感じの人だと思う。誰かさん達とは大違いだなあ。

尾崎さんとは駅で別れた。彼の片側の肩が少し濡れていた。



翌日の昼、私は会社の入っているビルのロビーを私と尾崎さんの二人で歩いていた。

佐藤さんは仕事で銀行に出たままで、篠山さんはと言うと…

「それ、絶対一花さん目当てですって。二人で行ってください」

「違うってば」

「もう、絶対そうだから。私はいきませんからね。先輩頑張ってください。彼、なかなかかっこいいじゃないですか」

「だからあ」

「仕事もなかなかできるらしいですよ。お似合いですって、鬼塚さんみたいに怖くないし」

そんなわけで、二人でランチに行く羽目になってしまったのだ。正直、ふたりが不参加の時点でまた次の機会にと言われることを期待したが、そうはならなかった。

うーん、なんだか困る。何を話せば。第一どこへ行けばいいの、お店。

そんな私の事情なんて関係なく尾崎さんは背中を見せて歩いている。まあ、お任せでいいのかなあ。
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