天使は金の瞳で毒を盛る
不測の求愛者
尾崎さんとランチを一度一緒したからといって、私の生活に劇的な事が起こるわけでなく。

たまにフロアの廊下ですれ違うと立ち話をしたりするくらいだった。それでも、今までとは違って気がつく分、ずっとよく話すようになってはいたけど。

そういえば一度榛瑠に、「あの人はやめなさい。だいたい、一花は男を見る目がないんですから」とか言われてめちゃくちゃムカついた事があったなあ。

ほんとに彼こそ何考えているんだか。一瞬ヤキモチ?って思ったけど、すごく冷ややかな顔していて、何のことない、言葉通りだった。

そんなある日の朝、同じ部署の葛城さんに給湯室で声をかけられた。あんまり話したこと無いのだけど背が高くて細身で、髪が背中まである彼女はどこにいても目に入ってくる、少し寂しいような顔をした美人だった。

「合コン、ですか?」

私は給湯室から戻りながら聞き返してしまった。

「そう、第1営業と。合コンっていうより飲み会ね。私、以前あそこの部署だったでしょ、声かけられて。で、女の子誘って来いって言われちゃって」

ていうか、なんであたし?

フロアに入ると、人がボチボチ集まり出してザワザワしていた。もう、仕事始めている人もいる。

「おはようございます。…どうしたんですか?」

篠山さんがちょうど部屋に入ってきて、声をかけてくれた。葛城さんが説明する。篠山さんもどう?とお誘い付きで。

「え、いいじゃないですか、行きましょうよ。楽しそう」

「篠山さんは人が集まるところはなんでも楽しい人だもん」

私が言うと彼女は、

「そうですよ、合コン久しぶり、行きましょ、行きましょ。どうせ、一花さん真面目だからそういうのあんまり行ったことないんでしょう」

篠山さんがワザと意地悪く言う。
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