天使は金の瞳で毒を盛る
「!?」

なにやってるのこのひと!

「どうぞ」

彼は靴を差し出したまま淡々とした表情で言う。やめてーと叫びたい。フロアにいる人、みんなみてるよ!

でも、そのままやめそうにもないので、私は靴をそっと履いた。足、震えてた?

榛瑠は立ち上がり際、そっと「ほどほどに」と私にささやくと、何食わぬ顔で自分のデスクにむかった。

「すごい!どきどきしたあ〜、一花さんシンデレラみたい!」

篠山さんが言う。私は力なく笑った。

なにがシンデレラよ。ただの嫌がらせじゃない。榛瑠ってば何考えているのだか。

なんだか隣の葛城さんの視線が冷たい気がする。あ〜あ…。もう、イヤ。




その週末、結局私は合コンだか飲み会だかわからないけどとにかくその会場にいた。なんか結局うやむやに参加になっちゃってて。

こういう時、つい断れない。よくないってわかってはいるのだけれど。

女性側には葛城さんと篠山さんも当然いて、あと、元営業補佐だった人とか、関係なく誘われた人とか。

男性側には、尾崎さんがいてちょっと驚いた。あとは、顔は知っているけど話したことない人たちばかりだった。

それでも、年齢は近いし、同じ会社の人だし、思ったより盛り上がって予定より長くみんなで過ごした。

会計をして店を出た時、小雨が降り出していた。

もう割と遅い時間だったが、二次会が組まれて、また、二次会に行く人たちとは別に帰る人達で、傘持ってる人がない人を駅まで送ったりと決まっていく。

私も傘を持ってなかったしどうしようかなあ、と思っていると、横から差し出された。
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