天使は金の瞳で毒を盛る
「送っていくよ?」

尾崎さんだった。わ、一度ならず二度までもお世話になるのは、と思ったけど、篠山さんは二次会組だったし、他に頼める人も思い当たらず好意に甘える事にした。

駅に向かう人達の後ろを歩きながら、尾崎さんが話しかけてくれた。

「今日、勅使川原さん来ていてちょっと驚いたよ。」

「あ、なんか、誘われて…」私は笑ってごまかす。「でも、楽しかったですね。」

尾崎さんがそうだね、と言う。

気づいたら、前を歩いていた同僚はどこかに行ってしまっていた。

「ちゃんと家まで送るから安心してね。時間結構遅いし。家、どの辺?」

「あ、それなら駅までお願いできますか?すみません。」

「その後は?大丈夫なの?」

「あ、最寄り駅まで家の者が迎えにきてくれますし、大丈夫ですので。」

「じゃあ、そこまで送るよ」

言われて私は内心慌てた。え、だって、車、までって。来るの、うちの運転手だし。そういう格好しているし、まずいでしょ。

「いえ、本当に大丈夫です。えっと、うん。」

「心配だし、送りたいから」

どういう事?なんか逆に困るんですけど。どうしよう。

「それに、酔いもちょっと醒ましたいんだ。送ってる間、話も出来るし。迷惑?」

ど、どうしよう。迷惑、とは言えないし。このまま送ってもらって駅で別れられれば問題ないけど、車まで、と言われると困るし。

家の場所とか突っ込まれても…。

思っているうちから質問された。

「家はどこなの?」
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