天使は金の瞳で毒を盛る
…言えません。遠いんです。地名まずいです。うーん、どうしたら…。

「なんか、俺、警戒されてる?」

尾崎さんが笑いながら言った。

「いえ、そんな事ないです。」

私は被りを振った。尾崎さんが、というより問題は私の方であって。

すごく急いで考えて、あることを思いついた。

「あの、じゃあ、じつはここからなら歩いてでも行ける距離なので、あの、近くまでいいですか?」

「もちろん、そこまで行くよ」

お願いします、と言って、私は行く道を変えた。

実は榛瑠のマンションを思いついたのだ。あそこなら、行ったことあるし、エントランスまで入ればいいし。

榛瑠の家を知っているわけはないし、なんとか誤魔化せないかなって思って。

これが良い思いつきかは正直自信ないけど…。

私のモヤモヤとは別に二人で何気ない話をしながら歩く。雨は冷たかったけど、小雨のままで二人で傘に入っていても大丈夫だった。

そのうち私も落ち着いて、楽しい気持ちになった。

榛瑠のマンションの下についた時には素直にお礼が言えた。

「こんなところまで、送っていただいてありがとうございました。」

「ここなんだ?いいマンションだね」

「あ、私の所有じゃないですけどね」

間違ってはいないよね?ちょっと、ていうか、だいぶ、後ろめたいなあ。

「はは、彼氏とか?」

思いがけない言葉に思いっきり否定した。

「冗談だよ、面白いなあ勅使川原さん」

「からかわないでください。」

全く外れているわけでない分、心臓に悪いです。
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