天使は金の瞳で毒を盛る
「あの、すごい勘違いです。どちらとも付き合ってませんよ？鬼塚さんには結構面倒見てもらってますけど、それはあの人の性格で。全然特別なことはないです。プライベートでは会ったこともないです。」

四条課長はプライベートで面倒見てもらってますが、それもまた別の話で。言えないけど。

「そうなんだ。私てっきり…」

そう言って葛城さんはグラスに口をつける。あーびっくりした。そんなふうに見えるのかなあ、気をつけないと。

それにしても、普段クールそうな彼女からこんな話をされるなんて。

あれ？っていうことは葛城さんもしかて榛瑠が好きってこと？

彼は女の人にモテるとは思うけど、こんなこと言ってくるなんて、彼女本気なのかな。

でも、片思い、と思う。榛瑠のタイプじゃない。じゃあ、どういうの？って聞かれると言語化できないんだけど、なんか違う。

そして、そういうことを判定してしまっている自分が嫌だった。

人の恋バナなんかに近づきたくない。

噂話が横行する一方で、それが命取りになる世界で過ごしてきていると、どうしてもそう思ってしまう。

それでも少し居心地悪そうにグラスを傾けている葛城さんを見ていると、勇気あるなあって思ったりする。

そのままお互い黙った時だった。

聞いたことのある声で名前を呼ばれた。

「葛城さんと勅使川原さんなんて、珍しい組み合わせで飲んでいるんだね？」

薄暗い照明の下に立っていたのは…尾崎さんだった。
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