天使は金の瞳で毒を盛る
一瞬、混乱する。

でも彼はためらいもせず、当たり前のように私の横に座った。

え?なに?なんで?

気にしているのは私だけってことなんだろうか。それならむしろ気が楽だけど。

「今ね、彼女と課長の関係探っていたところ」

葛城さんがふふっと笑いながら言う。

ちょっ、葛城さん、なんで? どうしてそこ?よりによって彼に!

「ああ、そうだよね、仲良いみたいだね。…住んでるマンション一緒みたいだしね?」

尾崎さんの言葉に飲んでいたカクテルを吹きそうになった。

待ってよ、なんで榛瑠のマンションを…。どこまで知って言ってるの?

なんだろう、たまたま見かけた?そんなことある?もしかして、またマンションきて、榛瑠を見かけたとか?

わあ、ありそうだし!でも、私のことは流石にそう簡単にはバレてないはず…。

私は居たたまれなくなって、その場を立ち上がった。

「ごめんなさい、ちょっと、お手洗い」

一人になって、思いっきり息を吐き出した。

まずいなあ、って、思ってもいいよね。悪気はないんだろうけど、探ってほしくはない。

彼を嫌いになりたいわけでもない。佐藤さんの言葉がふっと頭をよぎった。

その時、電話の呼び出し音が鳴った。榛瑠だった。

「お嬢様?お屋敷のほうから私に電話来ましたよ。今になっても連絡ないけど、一緒にいるかって。今どこです?」

しまった、こんなに遅くなるつもりでなかったから、ちゃんと連絡してなかった。

「ごめん、もうすぐ帰るから。大丈夫。私の方から連絡しておくから。心配しないで」

「私が送ると言っておきました。迎えに行きます。」
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