天使は金の瞳で毒を盛る
「吐いて」

冷静な低い声で言われながら、喉の奥に指をいれられた。

死にそうだ。涙で頬がぐちゃぐちゃになっているのを感じる。

ひと通り吐いて落ち着くと、ソファの上に寝転がされた。

「眠れば楽になる。顔だけでも拭くか。待ってろ」

榛瑠の声が冷たく耳に入ってくる。気持ち悪い。いつから私ここにこうしているんだろう。

なんだかよくわからない。暗闇のなかに落ちていきそうだ。

でも、その前に…。

「一花、何やって…!」

私は向きを変えようとしてソファから転がり落ちた。抱き起こそうとする手を拒んで言った。

「… お風呂、入る…」

「まだ無理です。溺れますよ」

目もきちんと開けてられない。グラグラする。

「やだ…入る…」

気持ち悪い。体全体が嫌でしょうがない。なんとか手足に力を入れて這って行こうとした。

「無理だと言っている」

低い声。怒ってる。そのままその場に倒れこんだ。涙が出てきた。もう嫌だ。

「もうやだ、大っ嫌い」

「なんのことですか」

「お風呂はいる、はるなんて嫌い、いじわるばっかり」

「なんでそんな状態のあなたに言われないといけないんだか…」

涙が止まらない。私が悪いの?なんでこんなに最悪の気分なの?

隣でため息をつくのが聞こえた。

「仕方ない、とりあえず準備だけはするから、そこで寝てて」

そう言うと部屋を出て行く。

ああ、一人になっちゃった。

私はぼんやした頭のままソファの横に上半身預けてそのままゆかに座り込む。

頭いたい。今のうちに服脱いでおこう…。
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