天使は金の瞳で毒を盛る
そう思って着ていたブラウスのボタンをはずす。つらくて眠くて目は閉じたまま。

細かい動きが億劫でうまくできない。ゆっくりやればいいや…、ゆっくり…。


なんだか暖かいなと思った。パシャっと音が反響する。

なんだろう、水?お湯?溺れる?

手足を伸ばして何かに捕まろうとする。と、ぎゅっと体を支えるものに気づいた。

ああ、大丈夫だ、溺れない。

ホッとする。暖かくて気分がいい。時々水音がする以外静かだ。

これ、夢かな。私、寝てるんだ。だって、ものすごく眠いし。

頬に触れている何かに気づいた。何かな、これ…。

「腕を噛まない、一花」

声が反響していた。細く目を開ける。明かりが目に入ってくる。それから、人のシルエット。

眠くて目を開けていることができず、すぐに閉じた。

柔らかい何かが唇を塞ぐのがわかった。

「…大人しく待っていてあげるのも、そろそろ限界ですからね?お嬢様」

「ん…」

答える間も無くまた唇が塞がれる、やさしく、ゆっくり。

水音がきこえた。
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