天使は金の瞳で毒を盛る
眩しくて目が覚めた。ブラインドが開いていて光が部屋に入ってきていた。

ぼんやりと辺りを見渡す。白いシーツが目に入る。それから…。

「おはようございます、お嬢様」

にっこり笑った榛瑠の顔がほんの数センチ先にあった。

…えっ。ちょっとまって。なんで。私、昨日…。

色々思い出す。そして色々思い出せない!えっと、何があった、私!

体があちこち痛む。とにかく起きなくちゃ。

そうして、巻きつけるようにして寝ていた毛布から体を起こして、…思考が一瞬止まった。

どうして私、何にも着てないの?

一瞬の空白の後、慌てて毛布を手繰り寄せて体に巻きつける。

心臓がおかしなくらいバクバク言っている。ちらっと榛瑠を見ると、何事もないかのようにベットの上に座っていた。

「な、なんで…」

「何がですか」

何がって、すべてよ!待って、私、昨日飲みに行って、なんか途中からおかしくなって、誰かに助けられて。

何が起こったのか、まず、一つずつ聞くべき?それともいきなり聞くべき?どうして裸でしょうかって。

…それ、無理。ゆっくりいこう。

「あの、昨日、私」

「はい」

「なんかしでかしました?」

だよね、きっと。

「ほんの少し馬鹿だっただけですよ。正確には脇どころか全面的に甘くて嵌められただけです」

「…それであの、助けていただいたのでしょうか」

ぼんやりと榛瑠と電話した記憶がある。それから優しい声とあと、黒い人影。

「私と、もう一人でね」

「…あの、…彼は?」

私に何か飲ませたであろう人の名を言いたくなかった。でも、気にはなる。

「さあ?」
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