天使は金の瞳で毒を盛る
榛瑠の返事はそっけなかった。

まあいいや、さすがに私も、今はそれどころじゃない。

ちょっとまってよ、車に乗せられた記憶はなんとなくある。で、多分ここまで来て…。

ドウシテハダカ?

口を開いたまま次の言葉が出ない私を見て榛瑠が言った。

「誤解のないよう言っておきますが、服を脱いだのはあなた自身です。私が脱がせた訳ではありませんからね」

「…え…」

…なんでそんなことした、私?人生やめるつもり?

「あ、でも、お風呂に入れたのは私ですけど。入るってきかなかったので」

水音…、聞いた…。お風呂って、いれたって、ハダカって…。

私は頭から毛布を被ってその場で丸まった。顔がめちゃくちゃあつい。耐えられない!

見られたどころじゃないわよ、どうしてくれるの、私!

なんとなく、覚えている。髪とか撫でてもらったし、ドライヤーの音とか聞いた気がするし。

それに、…それに、なんかすごい気持ちよかったような…。

そう思った時、心臓が飛び出た、と思った。

ついでに涙も滲んだ。

「なんだかすごく恥ずかしがっているみたいですが、あなたがお小さい時、着替えさせたりしてたの私ですからね」

「…一応、もう五歳児ではないもので」

私はボソボソ言ってみる。

「御心配なく。言うほど変わりません」

「…酷い」

「違うというなら、試して見ましょうか?」

え?

ぎしっとベットマットが揺れるのがわかった。思わず顔を上げる。

榛瑠が近寄ってくる。私は身動きも出来ず、ただ思いっきりぎゅっと目をつぶった。
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